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司法書士   林 嘉彦
社会保険労務士 亀甲 保弘


小説  『重加算税』   ≪ 第3章 売上除外・U ≫
  

−第 2 話 ( 喧 嘩 )−


 第1話 ( 半袖 )にもどる


 白い半袖のカッターシャツの腹の部分に、うっすらと白い腹巻が見えるのである。
 「この暑い暑い夏に腹巻か?????」
 確かに一度腹巻をすると夏でも取れないという。 取ると下痢をすると聞いたことがあるが・・・・・それか。

 「腹巻オジサンか。」
 松島は勝手に解釈した。

 それに半袖から出た腕に、大きな傷がある。
 「このオジサン、酔っ払ってガラスか何かで派手に腕を切ったのだろう。 酒癖も悪そうだし・・・・・」

 次に挨拶にやって来たのは、岩田と同じ国税局査察部から転勤してきた 『 塩飽 』 であった。 松島より 1つ年下のアゴ髭の濃い男であった。 査察から来るくらいだから相当の調査マンであろう。 と松島は思った。

 その日の最後に挨拶に来たのは、 『 小川 』 であった。
 小川を見て松島は、またビックリした。

 190近い身長と、90キロ近い体重・・・・・
 それでいてデブではない。 とにかく足が長くカッコイイのである。 
 足の短い松島は、税務署の机の高さが、ちょうど股の辺にくるのに、この男は、はるかに机から足が出て、机と股の作り出す三角形から向こうの景色が見えるのである。
 
 また、大きな目と凛々しい顔立ちは、とても税務署には勿体無い容姿である。 
 松島は、少し古いが、石原裕次郎の若い頃を思い浮かべたほどである。 
 

 こうして今年の特調の 1年が始まった。
 西南署の法人課税第 2部門の統括官は 『 岩田 』 、そして特調のメンバーは 4人、その他に機動担当の職員が 2人の合計 7人での船出となった。
 機動担当とは、調査もするが、一方で会社調査や銀行調査で資料等を集め、調査担当の裏方的役割を担う仕事である。

 今年の特調のメンバーのキャップ ( リーダー ) には松島が任命された。
 問題は副キャップ ( サブリーダー ) である。 その副キャップには転勤でやって来た小川が任命された。
 これには松島も頭が痛かった。 
 松島は、小川のことは全く知らないが、 問題は、松島より先輩であることだ。
 通常は、年齢順でキャップ ・ 副キャップを決めるのであるが・・・・・

 特調のメンバー構成は、松島と毛利の 『 小僧寿司コンビ 』 と、小川と塩飽のコンビに決まった。 大きな事案の場合は、3人又は4人で協力するが、原則はこのコンビ単位で調査することになる。

 毛利は例の 『 オトボケ毛利 』 である。 松島も毛利も寿司が好きで、2人で調査に出かけるときはいつも、480円の小僧寿司を買って、車の中で食事するので、 『 小僧寿司コンビ 』 と呼んでいた。 
 一方の塩飽は、統括官の岩田と同じ査察から配属されてきた、猛者である。 
 特調が 2コンビに編成されて調査する場合、どうしても競争になる場合が多い。 

 松島は、 『 オトボケ毛利 』 が気に入っていたし、小川と事績で競争する気も無かった。 
 しかし、小川が、先輩であるにも係わらず副キャップであることに不満を持ち、事績でライバル意識を剥き出しにした場合、特調全体の人間関係を壊しはしないか・・・・・それが心配だった。

 7月の人事異動後、西南税務署法人課税第 2部門の全員が、転居も完了した。

 小川は、その図体よりどちらかと言うと、顔にマッチした性格で、いつもニコニコした雰囲気の良い、好人物であった。
 これには、松島も一応安心した。
 「 これなら、事績を張り合うこともなく、協力して仲良くやれそうだ。 温厚な人物でよかった。 」 と思った。

 7月の終わり、第 2部門の顔合せ会、つまり飲み会が開催された。
 一次会はワイワイ・ガヤガヤの内に無事終了した。
 それにしても、7人のメンバーの内、酒が飲めないのは松島だけであった。 ほかの 6人の酒好きときたら凄かった。

 二次会では、スナックのカラオケとなった。
 問題はここで発生した。
 相当酔っ払っていた、統括官の岩田自身が、隣に座っていた、よその 3人グループのカラオケに因縁をつけて、喧嘩になってしまったのである。

 本来、冷静であるべき統括官自ら、喧嘩するのである。
 これには酔っ払っていない松島はびっくりして、慌てた。

 すると、いつもニコニコしている小川が、美貌の大きな目を一変させたかと思うと、190近い巨体で立ち上がり、 「 表へ出ろ! 」 と相手の上の方から怒鳴った。
 2階の方から怒鳴られた 3人は、ギョッとしたままものを言わなくなってしまい、すごすごと帰ってしまった。

 松島は、やれやれと思い、 「 今後、こいつ等とは 一次会で失礼しよう。 」 と痛感した。 
 公務員として危なくてしょうがない・・・・・とても、公務員とは思えなかった。
 それにしても、小川の豹変と岩田の酒癖の悪さには驚いた。

 ところが、この後これだけでは終わらなかったらしい。

 「 これは堪らん! こんな酒飲みに付き合っていたら、朝が来る。 懲戒免職が来る。 」 と、松島は2次会で失礼した。
 したがって、松島は見ていないが、毛利の話では、3次会の後解散したが、小川と毛利の2人が、駅までタクシーを拾いに歩く途中で、今度は小川が2人組みに因縁をつけたらしい。
 原因は何か?、どちらが悪かったのかは毛利も覚えていないそうだが・・・・・

 大きな声での喧嘩の最後に小川が
 「 よーし、1発ずつ殴り合おう。 お前から先に殴れ。 俺は空手をやっていて、右腕で殴ると犯罪になるので、左手でいい。」 と言い出した。
 相手も相当酔っ払っていたらしく、応じてきたらしい。

 結果、相手は鼻血だらけの顔となったらしいが、詳しいことは不明であった。
 よく、警察沙汰にならなかったものである・・・・・

 問題は小川である。
 この男、 「 空手をやっている。 」 とは真っ赤なウソ。 
 「 左手でいい。 」 と言ったそうだが、実は小川は左利きで、右手ではパンチが弱く、人を殴れないのである。

 小川は今日も、ニコニコ仕事をしている。
 この男の本当の素顔が、全く判らなくなってきた。



  第3話 ( 喧嘩 ) につづく



* 登場する人物、団体等の名称及び業界用語は架空のものです。